まほろ駅前番外地 :: 三浦 しをん

2019年11月15日

多田便利軒

本書『まほろ駅前番外地』は、『まほろ駅前多田便利軒』に続く『まほろ駅前多田便利軒シリーズ』の第二弾作品です。

番外編としての作品集ですが、そのまま続編としてシリーズを構成している作品です。

光る石 | 星良一の優雅な日常 | 思い出の銀幕 | 岡夫人は観察する | 由良公は運が悪い | 逃げる男 | なごりの月

以上の全七編からなる短編集であり、多視点で描かれていて、雰囲気が異なる作品集となっており、そうした観点では番外編とも言えそうです。

女同士の、男にはどうにもわからなそうな争いや(光る石)。
星良一とよく分からない男の話(星良一の優雅な日常)。
少々ボケの入った曽根田のばあちゃんの話(思い出の銀幕)。
多田と行天を昔から知る岡夫人の話(岡夫人は観察する)。
小学校5年生の田村由良と行天の話(由良公は運が悪い)。
柏木亜沙子と別居中に亡くなった夫のお話(逃げる男)。
預かった娘と行天の過去の話(なごりの月)。

多田と行天に便利屋の仕事を依頼した側からの視点で語られるそれぞれの物語です。

けっして明るくはないこのシリーズですが、本書もまた重いテーマを扱っています。

しかし、多田と行天の二人の行動はその暗さをあまり感じさせずに終わります。

三浦しをんという作家のうまさが光る、ドラマ化や映画化もされたこのシリーズのユニークな一冊で、読みがいがあった作品でした。