国境 :: 黒川 博行

2019年11月18日

疫病神

本書『国境』は、『疫病神シリーズ』の第二巻目の長編小説です。

疫病神コンビが詐欺師を追って北朝鮮へと旅をすることになり、あい変らずの騒動の顛末が語られます。

暴力団幹部でである桑原の兄貴が詐欺師の口車に乗せられてしまう。

また、建設コンサルタント業の二宮が仕事の仲介をした相手も詐欺師に引っかかってしまう。

そこで桑原と二宮は北朝鮮まで詐欺師を追いかけざるを得ない羽目に陥り、その旅先でやはり騒動を巻き起こすのだった。

今回の『国境』では、日本を飛び出してよりにもよって北朝鮮を舞台としています。

桑原二宮というおなじみのコンビが、ともに一人の詐欺師のあとを追って北朝鮮まで行くことになるのです。

何といっても、本書『国境』は北朝鮮に関しての描写が詳細であり、一般人はまずほとんど知らない北朝鮮の内部事情をもよく調べ上げて書いてあります。

巻末に載せられた資料の量を見ると作者の勉強のほどがうかがえるのです。

本書の特徴としては北朝鮮が舞台であることが挙げられるとしても、本書が属する『疫病神シリーズ』の魅力の一つとして挙げられる桑原と二宮の二人の大阪弁での掛け合いは、本作でも同様です。

本書『国境』の内容は非常にシリアスなものを含みながらも、任侠ものに似たテイストを感じる仕上がりになっています。

そうした漢(おとこ)を感じさせる展開はこのシリーズの一つの魅力ともなっているのでしょう。

何より、桑原と二宮の調子のいいやりとりが一番の魅力であるところは否定するものはないでしょうが、それに加えてハードボイルドチックな魅力をも持っているということです。

この『疫病神シリーズ』は後に『破門』で第151回直木賞を受賞しますが、受賞の回も含めて都合四回も直木賞の候補としてリストアップされているのですからシリーズ作品個々の水準の高さが伺い知れます。

本書『国境』は、直木賞を受賞した『破門』よりも面白いという声もあるほどの作品です。是非一読してみることをお勧めします。