砂の狩人 :: 大沢 在昌
本書『砂の狩人』は、『狩人シリーズ』第二弾の長編のハードボイルド小説です。
渋い男の魅力を持つ人物を配した、強烈な魅力を持った物語であり私の好みに合致したエンターテイメント小説です。
三つの指定暴力団の代表者の夫々の子供が殺された。三件ともに咽頭部に携帯電話が挿入されていたという共通点があった。
それぞれの代表者がほかの組でも同様のことが起きていることを知れば、犯人探しの矛先は外国へと向かう。
中国人犯罪グループへとの戦争になることを恐れた警察庁刑事局捜査第一課の時岡警視正は、未成年の連続殺人犯人を撃ち抜いたという過去を持つ西野という元刑事を現場へと連れ戻すのだった。
本書『砂の狩人』は、登場人物のキャラクターがこの手の物語の定番ともいえる「漢(おとこ)」を感じさせる人物たちであるところがまず魅せられます。
過去に殺人犯を殺害した過去を持つ元刑事の西野と、空手は三段でありボクシングでも全日本四位の力を持つ暴力団組長工藤文一のボディーガードの原という男がそれです。
加えて、中国人犯罪グループのまとめ役である中国人の馬という男がいて、さらに時岡警視正の上司氏森なども癖のある人物として登場します。
そして、これらの役者をまとめ、動かす役割である本『狩人シリーズ』の立役者佐江が加わり、まさに男のハードボイルド小説として仕上げられているのだから面白いはずです。
大沢在昌の作品には数多くの魅力的な女性も登場しますが、本書に限っては男の物語となっているのです。
シリーズ第一巻の『北の狩人』が魅力的なキャラクターが登場したにもかかわらず、途中から普通のアクション小説になったのと異なり、本書『砂の狩人』は最後まで濃厚な時間が流れていると言えます。
北方謙三や志水辰夫と言った作家たちとはまた違う男たちの物語がここにあると言えるでしょう。
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