宰領: 隠蔽捜査5 :: 今野 敏

2019年10月19日

本書『宰領: 隠蔽捜査5』は、今野敏の人気シリーズである『隠蔽捜査シリーズ』の長編では第五弾となる警察小説です。

神奈川県警との合同捜査本部の指揮を執ることになった竜崎が、反目する二つの組織をどうまとめるのかが注目されます。

ある日、竜崎の幼馴染でもある警視庁の刑事部長である伊丹俊太郎から電話を受けた。衆議院議員の牛丸真造が行方不明になったという。

牛丸の秘書で竜崎らの後輩でもある田切勇作は、ことを荒げたくないので極秘に調べて欲しいらしい。それでも、竜崎は国会議員が姿を消したという事実をもとに対策を練るべきと考えて指示を下した。

その矢先に牛丸の事務所の車が発見され、車内から運転手の死体が見つかった。

先に書いたように、本書『宰領: 隠蔽捜査5』の面白さは、神奈川で起きた事件そのものよりも、仲の悪い二つの組織からなる合同捜査本部を竜崎はどのようにまとめるか、という点に尽きると思います。

そして、その期待に応えるのが今野敏という作家であると思うのです。

竜崎というキャラクターが自身の行為規範をそのままに貫くさまが小気味いいのであり、本書もその例に漏れません。

特に本書の場合、竜崎の前に現れるのは神奈川県警であり、単なる組織内の個人ではないところがこれまでと異なっています。

もちろん、そんな組織間の対立など竜崎にとっては非合理であり、非効率であることは明白なのであって、竜崎なりの筋を通していくことになります。

そして、そのさまが小気味よく、読者はいつものように竜崎に対して喝采を送ることになるのです。

あい変らずに面白い物語です。