逆流 越境捜査 :: 笹本 稜平
本書『逆流』は、『越境捜査シリーズ』第四弾となる長編の警察小説です。
本書はシリーズ第一弾ほどの重厚感は無く、主人公の鷺沼の活躍も今一つで盛り上がりに欠ける作品だと思えます。
警視庁刑事部捜査一課特命二係に属する鷺沼友哉(さぎぬまともや)は病院のベッドの上で眼を覚ました。
傍には上司である二係の係長三好章(みよしあきら)と相方の井上拓海(いのうえたくみ)巡査、それに神奈川県警の嫌われ者の万年巡査部長である宮野裕之(みやのひろゆき)がいた。
鷺沼は次第に自分のマンションの外階段で見知らぬ男に刺されたことを思い出す。
何故自分が狙われたのか不明なままであったが、宮野は鷺沼の抱えている荒川河川敷で発見された白骨死体の捜査と、宮野自身が聞きこんだ殺人事件の端緒らしき事案との関連を疑う。
それは小暮孝則という現職の参議院議員が持っていた家屋に絡んでくるかもしれないという、雲を掴むような事柄ではあったが、白骨死体の捜査が進む中、宮野の言葉が現実味を帯びて来るのだった。
本書での鷺沼は冒頭で何者かに刺され、ベッド上での生活を余儀なくされています。
従って、相方の井上拓海や、嫌われ者の万年巡査部長宮野裕之らが集めてくる情報を頼りに推理するしかありません。
ということは、本書の形態はいわゆるアームチェアディテクティブものにも似た推理を中心にした作品とならざるを得ず、今一つリズムに乗り切れていないと感じたのでしょう。
本書『逆流 越境捜査』の笹本稜平という作者はスケールの大きな冒険小説を得意とする作者だと認識していたものの、本書はその認識とは逆の展開になっていて、今一つ乗り切れませんでした。
この『越境捜査シリーズ』は、第一巻のように重厚でダイナミックな展開をこそ持ち味とするシリーズだと思っていただけに残念な気がします。
シリーズの途中を飛ばして読んだためかもしれませんが、それにしても残念な展開でした。
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