機龍警察 自爆条項 :: 月村了衛

2019年9月14日2022年5月31日

本書『機龍警察 自爆条項』は、『機龍警察シリーズ[完全版]』第二弾の長編のアクション警察小説です。

アクション小説として第一巻を超えた面白さを持った物語でした。

鶴見署の刑事は横浜港大黒埠頭で作業中の男に職務質問をかけた。

声をかけられた男が懐から取り出したのは軽機関銃であり、一瞬のうちに刑事や同行した横浜税関大黒埠頭出張所の職員、近くにいたトレーラーの運転手などが射殺され、その上、犯人の男もコンテナ船に閉じこもった末に自殺してしまう。

そのコンテナ船に格納してあったのは、既に組み立てのおわった完成形態の機甲兵装、通称キモノであった。

日本国内ので大規模なテロが計画されている可能性があり、警視庁特捜部がその捜査を担当することとなった。

本書では龍機兵の操縦者の一人ライザ・ラードナーについてかなりの紙数が費やされていて、IRAきってのテロリストだったライザの悲惨な過去が語られています。

ライザだけの独立した一編の物語を書くにも十分な情報を費やしてあるのです。

そのライザがIRAを離れ、警視庁特捜部所属の龍機兵の操縦者となるに至った経緯が明らかにされています。

更には、鈴石緑技術主任の過去とライザの過去とが、一点において交錯していることも明らかにされ、そのことがこの物語の今後にどのような影響を与えるものか、ある種の緊張感をもたらすことになります。

こうして、ライザの過去が明らかにされるとともに、アクション小説として龍機兵の活躍する場面も満載であり、面白い小説としてかなりの水準を保っている小説だと思えるのです。