江戸ながれ人-紀之屋玉吉残夢録(4) :: 水田 勁

『紀之屋玉吉残夢録シリーズ』の長編痛快時代小説の第四弾。
この作品を最後にシリーズは書き継がれていない。
箱師の正平、芸者の染吉、半玉の雛菊、ちづという門前仲町の置屋紀之屋の面々、目明しの喜久造の子分の伊之助、そして用心棒代わりの玉吉らは本所五ツ目(今の東京都江東区大島)にある五百羅漢寺に来ていた。
田圃の真ん中に立つこの寺のさざえ堂の回廊は三階建であり、江戸全体が一望できる名所だった。
「火事だ!」との声をもとに見やると、北側の亀戸方面に半里(二キロ)程先に煙が上がっている。早速様子を見に行くことになった一行だったが、そこで不審な侍たちとすれ違い、更には裸の女を拾うこととなってしまう。
また、焼け跡からは家主と思われる男と、侍の死体が見つかる。拾った女を匿うことになった玉吉らはこの侍をめぐり、とある藩の揉め事に巻き込まれることになるのだった。
ハードボイルド時代小説と言える本『紀之屋玉吉残夢録シリーズ』だが、本書『江戸ながれ人』もその例に漏れない。
ただ、本書では主人公玉吉の職業を太鼓持ちにした意味はほとんど感じられない。
では面白くないのか、と問われれば面白い小説だとしか答えられないのだが、せっかくの設定がもったいないとは思う。
火事場で拾った女の描き方も、その正体が少しずつ明らかになる過程も妙にいろいろと不自然な理由をつけてないのも好感が持てる。
本『紀之屋玉吉残夢録シリーズ』が本書『江戸ながれ人』の最後に罹れていないのが非常に残念に思われるシリーズでした。
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